花火大会


「リョーマ!」

周助は人ごみの中リョーマを見つけ叫んだ。

待ち合わせ場所に付く前に見つけ、会えるなんてなんて幸せなんだろう・・・そう噛み締めながら・・・

リョーマは振り向いた。

そして周助に気がつく。

「・・・」

しかしリョーマは何も言わず、立ち止まる。

待ってるから早く来てくれと言わんばかりに。

生意気な恋人を持ったものだと思いつつリョーマに近づく周助。

「やあ、浴衣も似合うね」

そっか浴衣だから走れなかったんだと気がつく周助。

リョーマは少し照れたのかそっぽを向いた。

「それにしてもすごい人ですね」

横断歩道の上から下を見下ろして黒い塊たちを見ながらそうつぶやくリョーマ。

確かにその塊たちはすごい数だ。

「さて行きますか」

リョーマは告げ、歩き出す。

周助はリョーマの手をとった。

「先輩!」

慌ててリョーマがそう言うと落ち着いた顔で周助は

「こんな人混みの中誰も見ていないよ」

と一言言い、リョーマを安心させようとする。

「そうっすね」

そう言うとリョーマは手を握り返した。

周助は微笑む。

そして人ごみの中を歩き出した。



しばらく歩くと潮の香りがしてきた。

「さあもう少しだ」

周助の言うとおり行き先は海岸で、潮の香りがしてきたということは海岸に近づいた印だ。

リョーマは慣れない下駄に戸惑いつつも歩き続けた。



「さあ着いたよ、あまりいい席じゃないけど、ちゃんと見えるはずだよ」

着いた先にはもう先に席を取ってしまった人たちの後ろのほうで、決していい席とはいえなかった。

二人して座り込んで開始を待った。



パーン!

大きな音とともにそのセレモニーは始まった。

目の前に火の華が散る。

その度に黄色い声が上がる。

「もう少し静かなところで見たかったっすね」

リョーマの言葉に周助は少しだけ陰りを見せる。

「すみません・・・」

「いや、いいんだよ、そうだよね、せっかくだから静かなところで二人っきりで見たかったね」

「二人っきり・・・」

その言葉に自分の言葉を後悔するリョーマ。

二人きりだと周助はいつもリョーマを抱くことを思い出した。

「どうしたんだい?顔が赤いけど?」

「なんでもないっす!」

慌てて言葉を投げる。

そしてごまかそうと空を見上げた。

「綺麗だね」

「そうっすね・・・」

色とりどりの花火がどんどん打ち上がる。

思わず見とれてしまう。

「リョーマ・・・」

周助はリョーマにキスする。

「大丈夫誰も見ていないよ。」

リョーマは安心し、また空を見上げた。

花火はどんどん打ち上がり、二人の心も高揚していく。

「今日はしないから安心してイイよ」

周助の言葉に思わずリョーマは周助の顔を見つめる。

何をいきなり信じられないことを言うんだこの人はと思いつつ。

「今日はおもいっきり花火を楽しもうよ、帰りは送るから」

そうして周助は空を見上げた。

そして仕掛け花火になると指を空に向けリョーマに説明する。

そうして時間は過ぎていった・・・

こんな日も必要だと感じた一日だった・・・